ドコノモリ

うきやま山のすそ野にて


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おひざ

おひざ

わたしのおひざに
お人形をのせて
わたしは おかあさん

わたしのおひざに
生まれたばかりのおとうとを
のせて
わたしは おねえちゃん

わたしのおひざは
それからしばらく空っぽで
そのうち
誰かさんの枕になって

やがてわたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おかあさん

それからそれから
赤ちゃんが
次から次へやってきて
わたしのおひざは
ずっと満員です

それでもいつか
誰もいなくなって
わたしのおひざは空っぽ

誰かさんが摘んできてくれた
野の花一輪
おひざに置いたけれど・・・

ある日
わたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おばあちゃん

わたしのおひざに
ミルクのしみ
たべかけのビスケット
小さなお人形
坊やがこしらえてくれた
木の小鳥
川で拾ったつるつるの小石

わたしのおひざに
今はもうないけれど
わたしのおひざは
覚えている

ずっとずっと昔
わたしはおひざに
お人形をのせていた

私はおかあさんの
おひざにのっていた

わたしのおひざは
覚えている

おかあさんの
おひざを
覚えている

2013.5.27

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遠足

ドコノモリ
さて、浮き山さんの登り口までの道は、皆が思っていた以上に大変なものでした。
そもそも「道」というものがなかったのです。

茨や倒れた木、背の高い雑木がごちゃごちゃ生えている間をくぐりぬけ、沢を石伝いに歩いていきました。
方角がわからなくなったこともありましたが、元風船のプーニャがふわりと木の上まで飛んで、確かめたりしました。

小さなうっとりさんたちのことが心配ですね。
グーヨは、おなかのたるんだシワの間に、うっとりさんをすわらせました。
チコちゃんの肩かけカバンの中には、パンニプッケルさんが入りました。
大丈夫、皆助け合って行ったのですよ。

浮き山さんの登り口には、大きな杉の木が柱のように道の両側に、列をつくって立っていました。
両側の杉の木は、森の仲間たちが歩いていくのを、じっと見えない眼で追いかけてくるようでした。
「まるで門番のようだなぁ。」とミッケくんは思いました。

鳥の鳴き声も、虫の声もしません。
周りがあまり静かなので、大きな声でおしゃべりすることもやめて、皆、ひとかたまりになって歩きました。

地鳴りのような音が、長く長く聞こえて来ます。
どうやら浮き山さんの寝息のようです。
杉の木立はさらに奥の方まで拡がり、昼間なのに夕方のようにうす暗いです。

「おみやげ、どこに置こうかな?」

周りを見回すと、ずい分石があります。
孔雀の羽根のようなピカピカ光った石や、ピンク色のアメ玉みたいな石とか。
お月さまの光のような石とか、珍しいものばかりです。
これは浮き山さんが集めたものなのかも知れません。
一列にきちんと並んでいます。
中に、おみやげに持ってきた石と、とてもよく似た石がありました。

「あれー。これも浮き山さんのぼんぼんに似ているね。」と、じっと見ていたチコちゃんが、「あはは、これ、ぼんぼん。本物!」と笑いました。
ぼんぼんが寝ていたのです!
じっとしていたので、まちがえちゃったのでした。

「あー、絶対、このおみやげだったら喜ぶよぉ。」とグーヨ。
「そうだね。」
「きれいに周りをそうじして、目立つようにして置いていこう!」とミッケくんが言ったので、皆もせっせとおそうじをしました。
それから皆は、そぉーっと浮き山さんの登り口から離れたのです。
ドコノモリ
小川がちゃぷちゃぶおしゃべりをしている所まで戻って、ふうーっとため息をつきました。
大きな声でしゃべるのをがまんするのって、とても大変でした。
パンニプッケルさんは、皆が杉の大木がすごかった、ちょっとドキドキしたと、わいわいしゃべっているのをにこにこしながら聞いていました。

そうこうしているうちに日が暮れて来たので、小川で水をくんで、お茶をわかすことにしました。
お湯がわくのを待つ間、タバールさんはコンサティーナを取り出し、軽く蛇バラをひろげて、ラ・ラ・ラーと音を出しました。
ホッとするような音色に、皆もにっこりしました。

そばでさっきから木の葉の下の虫を捜してビョンビョンはねている、まるいお団子のような鳥が、びっくりしてタバールさんをみつめました。
・・・そして、その音色をマネしはじめました。

「おやおや・・・。君、ものマネが上手だね。」タバールさんにいわれた鳥は、ちょっとムクれたようです。
「マネじゃないやい!ボクは黒つぐみ。みんなにきれいな声の歌い手といわれているんだ。歌いたいんだ。あれもこれも。えーと、あなたさんのそのー、きれいな音色をきいて、たまらなく一緒に歌いたくなったんだよ!」
「おやおや、それは失礼。では、改めて一緒にどうぞ!」
タバールさんに誘われて、黒つぐみは歌いはじめました。

コンサティーナの歌う声と黒つぐみの声は仲良く響きあって、初めての共演にしてはすばらしいものでした。
皆は、大喜びで拍手しました。

まわりはどんどん暗くなって、やがてお湯もわきました。
温かいお茶をのんで、木の枝にお団子をさして火であぶってたべました。

うっとりさんは、お団子のかけらを3つに分けて、パンニプッケルさんと黒つぐみにあげました。
黒つぐみは眼をまん丸にして、「うまい!」と言いました。

パンニプッケルさんは、小さなかけらを口いっぱいにあけてたべました。
(お・い・し・い)という顔になりました。
ドコノモリ
たき火の炎が勢い良く上がりました。
いよいよミッケくんとグーヨ、プーニャとタバール、それにうっとりさんの楽団の演奏が始まりました。

チコちゃんもパンニプッケルさんも黒つぐみも、皆、体がむずむずして踊りたくなってきました。
曲のテンポが早くなり、チコちゃんは眼が回るくらい、くるくる回りました。
スカートがふくらんで、一人前の踊り子の気分です。

そのうち、プーニャもタバールもグーヨも楽器を放り出して、手と手をしっかりつないで踊りの輪をつくりました。
ミッケくんのバイオリンは、どんどん早くなっていきます。

渦巻だ!
渦巻だ!
飛んでいけ、飛んでいけ
空まで ぶんぶん
飛んでいけー!

踊りの輪の上には、天の川が広がっていました。
皆の体が本当に浮き上がっているみたいに
星々が大きく近く見えました。

翌日、皆が広場に戻った時、浮き山さんの頂上に虹が出ているのが見えました。
虹は、今まで見たこともない、先端が2つに分かれている噴水のような姿をしていました。
まるで、クジラの潮吹きみたいな虹でした。
皆、嬉しくて手をパチパチたたいて、ワーワー騒ぎました。

よし、この次はクジラの形の石を持っていこうとミッケくんは思いました。
そして、別のルートを通っていこうと考え、ニヤッとしました。

2013.5.18(第6回)
つづく


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「願」

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梢は 私たちのゆりかご
いのちの先っぽで
星々からの信号を受け取る
ふるえながら
でも じっと眼をそらさないで見つめている
私たちは いのちの先っぽで
育っていく
それぞれが ひとりで
ひとりっきりの眠りをとおして
育っていく
いつか 星々からの信号に
お返事できるようにと

2013.5.12


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ミッケくんのお店

ドコノモリ
ミッケくんがドコノモリにいつ頃来たのか、誰も知りません。
何日も何日もミッケくんの姿が見えないことがありますし、ドコノモリでは見かけない物を持っていることもあります。
ドコノモリの外まで探検に行っているのかも知れませんね。
でも、ミッケくんに質問してもだめですよ。
ニヤッと笑ってはぐらかされてしまいますから。

さてさて、ミッケくんは自分のおうちにしている木の洞の外に「みせ」という看板をだしました。
「みせ?」
「何を売っているの?」と聞かれたミッケくんは
「ぼくが売りたいものを売ります。明日、見に来てください。」と言いました。

さあ、みんな楽しみにして、その晩はそれぞれお金づくりに励みました。
ドコノモリで使えるお金は葉っぱです。
使う人がつくるんですよ。
松の針で葉っぱに小さな穴をあけて模様を作ります。
使用期限は1日だけ。ためたりできません。
ためておくと腐りますから、たいていお金をもらった人は捨ててしまいます。

・・・あ、それを虫が拾っていくのです。
虫のおうちの部屋飾りに、ちょうどいいとのことです。
お月さまやおてんとうさまの光で模様が透けて見えてとってもきれいなんだそうです。
虫のおかあさんたちはおおよろこびします。

さて次の朝、ドコノモリの仲間たちはごはんをたべたあと、大いそぎでミッケくんのお店へと出かけました。

お店は木の洞の中ではなくて、外に品物を並べてありました。
ミッケくんは窓から顔を出して「いらっしゃいませ!」と言ってニヤッとしました。

大きな朴の葉っぱが敷きつめられた上に品物が並んでいます。
山鳥の長い尾羽根や、短い羽根でつくったほうき、火打ち石、水晶、黒曜石、ろう石、木の枝を輪切りにしてつくったおはじき、等々。
とりたての粘土もありました。
「おおー」とグーヨが言いました。
「土笛ができるなぁ。」
タバールさんはクロモジのようじを手にしました。
「歯のおそうじに良さそうだ!」
肉桂の皮もありました。
みんなニコニコして、甘い肉桂の皮をしゃぶりながら見て回りました。
石ころが沢山並んでいます。
じっと見ていたプーニャが「あら?」
「あらら?」とびっくりした声をあげました。
「この石、誰かに似てる!」
「プーニャだ!」皆が言いました。
「これはチコちゃんだ。」
「あ、パンニプッケルさんもあるよ。」
「これは・・・?」
「浮き山さんのぼんぼんだあ!」
皆あんまりそっくりなので大笑いしました。

ミッケくんのお店の品物は、皆がいっぱい買ったのでほとんどなくなってしまいました。
ミッケくんはお店のかたづけをしながら、浮き山さんのぼんぼんに似ている石をを眺めて、浮き山さんにあげたいなと思いました。」
「これ、浮き山さんに持って行ってあげよう!」
「うん、きっと喜ぶよ!」皆、にこにこして言いました。
「遠いから、一晩キャンプしようかな?」とミッケくん。
「わー!キャンプ?!」
「いきたーい!」「一緒にいこうー!」と大さわぎになりました。
そして、ドコノモリの仲間たちはミッケくんと一緒に浮き山さんの登り口まで出かけることにしました。

2013.5.6(第5回)
つづく