ドコノモリ

うきやま山のすそ野にて


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新しい友だち

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ドコノモリに住む者たちは、皆、私の果実を食べています。
私たち草木族は死にません。
生き続けます。
生命を、次から次へと託して行きます。
死んでいても、生きているのです。

赤ちゃんも
風船の子も
草木族の果実を食べました。
決して死なない生命の炎が、どんな働きをこれからして行くのか。
赤ちゃんも
風船の子も
それぞれに
自分の役目を果たしてくれるでしょう。

大丈夫
あなたたちは
私の子ども
私のことばを覚えておきなさい。

プーニャは、子育ての樹のお母さんが言ったことばを、思い出していました。

プーニャは、子育ての樹のお母さんがくれた金色の実を、毎日赤ちゃんと風船坊やにあげました。
赤ちゃんの瞳は、ドコノモリに来た時からずっときれいに澄んでいました。
沢山の戦いの場を見ていた瞳は、それ以上に沢山の美しいものを見ていたのでしょうか。

風船坊やの瞳も、いつもキラキラしていました。
風船坊やの笑い声は、辛い経験を突き抜けて、明るく四方へ拡がっていくのでした。

プーニャは、風船坊やに「ボーニャ」という名をつけました。
そしてボーニャは、プーニャの子どもになりました。
プーニャとその子どもたちの所へは、いつもチコちゃんが来ていました。

プーニャのお手伝いになればと思ってやって来るのです。
お手伝いと言っても、子どもたちと一緒に遊ぶことなのですけれどね。

ドコノモリの仲間たちも、やって来ますよ。
そして、一緒にお茶を飲んだり、川遊びをしたり、散歩をしたり木登りをしたりして遊ぶのです。

赤ちゃんは、皆に抱っこされたりおんぶされたりして、大切に育てられました。
ボーニャは、赤ちゃんよりだいぶ大きなお兄ちゃんですから、ドコノモリの仲間たちは、ボーニャを皆の弟にしました。

弟には、釣りのやり方とか、泳ぎ方とか、草のつるで縄を作る方法とか、遠くのものを見る術とか、色々教えたくなりますね。
ボーニャは、何もかもが目新しいことばかりなので、喜んで毎日色々なことを森の仲間に教わりました。

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さて、ある日のことです。
かごの中に入っている赤ちゃんが、機嫌良くバブバブとおしゃべりしているのを、ボーニャは見ていました。

赤ちゃんは、チコちゃんがカバンの中から出してくれたお人形を手に持って、バブバブ言っているのでした。
お人形は、木のお人形でした。

ボーニャが見ていると、まあ、お人形が目をパチパチさせているではありませんか!
赤ちゃんはさらに上機嫌になって、バブバブ言ってお人形をなめ始めました。

すると、「きゃあ!」という声がしたのです。
赤ちゃんもボーニャも、びっくりしてしまいました。

「ごめんね。赤ちゃん。びっくりさせて。私もびっくりしちゃったのよ。」
お人形は、ちょっと恥ずかしそうに言いました。

「私は、木で出来ているのよ。ずっとずっと昔、チコちゃんのご先祖さまが、山の中の木を切り出してね、私を作ってくれたの。」
「私は、沢山の赤ちゃんや子どもたちと遊んだわ。抱っこされたり、それこそなめられたり。」
「でも、しばらく赤ちゃんに会っていなかったから、急になめられてびっくりしてしまったの。」

「あー、そうだったのかー・・・。」
ボーニャは、お人形を見つめました。

チコちゃんのご先祖さまが作ったということは、相当のお年寄りのお人形のようですが、チコちゃんに毎日磨いてもらっているのでしょうか、木の肌はツヤツヤしていてとてもきれいでした。

丸い頭は、チコちゃんみたいにおかっぱの髪を、絵具で描いてありました。
丸くて黒々とした眼、ほっぺは赤く丸く塗ってありました。
元気なかわいい女の子の人形でした。

「あのね、私ね、チコちゃんと一緒にドコノモリへ来たのよ。雲と雲の間をピョンと飛んでね。最後は、長~~いハシゴを伝って降りたの。」

「わー!」ボーニャは、ますますびっくりしました。

「それでね、私ね、チコちゃんがカバンの中に入っていなさいって言ってくれたのに、ちょっと外を見たくなってしまったの。」
お人形は、どんどん早口になってきました。

「そしたらね、私、すごーく高いところにいるなって分かって、目を回してしまったの。」
「チコちゃんはドコノモリに着いた時、私が目を覚まさないのでとっても心配したんですって。」
「早く目を覚ますといいなと思って、ドコノモリの仲間も交替で私の世話をしてくれたのよ。」

「パンニプッケルさんは、私をつれて陽の当たる所で一日中ひなたぼっこしたの。」
「私は、ポカポカにあたたまったわ。私の生まれた林も、陽の当たる明るい林だったなぁって、思い出したわ。」

「グウヨは、私をつれて森の中を散歩したわ。」
「小鳥が歌っていた・チュチュチュ、チュチュピー、ピュルピュルピー、ピッピーリリリ、ツーツーピィーって。」

「川がおしゃべりしてた。葉っぱがこそこそしゃべってた。」
「そしてグウヨが笛を吹いてお返事したのよ。笛の音色は、木の兄さんたちの声に似ていたの。」
「私、楽しくなって、すこし体がやわらかになったみたい。」

「そしたらね、ミッケくんがね、私にね、『ほかほかあたたかいね。ほっぺにえくぼができたよ。目をあけてごらん。もういいよー。』と言ったのよ。」
「私は、『まだだよー』と言ったら、皆の笑う声がして『もういいよー』と皆が合唱したの。」
「私もおかしくなって、『もういいよぉー』って言って目をあけたのよ。」
「皆のにこにこした顔と、その後ろにきれいなきれいな森があったの。」

お人形は、にっこりしました。
そしたら、木の肌に小さなえくぼができました。

「そしてね、私ね、ボーニャと赤ちゃんに言いたいことがあるの。」

「え?なーに。」

「こんにちわ、ようこそドコノモリへ。私のおともだち!」

ボーニャと赤ちゃんは、新しい友だちに出会ったのでした。

第10回 つづく 2013.7.9

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霧の中で・・・

ドコノモリ
ドコノモリ

霧が深くなってきました。
ミッケくんは、森はずれ・森の入口のところで、ずっとしゃがんでいました。
今夜は、とても静かな夜です。
いつもだったら、ヨタカやウソが鳴いているのですが、何だかとてもまぶたが重たくなるような静けさが、ドコノモリを包んでいました。

静かな深い霧の中で、ミッケくんは声を聞いたように思いました。

「私の近くへ
私の近くへ おいで
近くなら
私は あなたを守ってあげられるから
おいで
私の子どもたち」

ミッケくんは、ハッとしました。
浮き山さんだ!
浮き山さんが呼んでいる!
森のはずれ・森の入口から
霧に守られて、ウサギ、小鳥、虫などが
入ってきました。

ミッケくんは黙って森の奥の方を指さして見せました。
皆、ほっとしたように黙って森の奥の方へ姿を消していきました。
カメの家族が大汗をかきながら森の奥へ歩いていくのを見送って、ミッケくんもそろそろ帰ろうかな?と思った時、森のはずれの茨の向こうで何か気配がありました。

「『行き止まり。』何でこんな看板があるのだろう。
茨があるなら切り払って先へ行けばよいものを。
いやいや待て。ちがうぞ。
茨の先にあるものを、ひょっとして・・・
茨よお前は、守っているのだろう?
茨の先にあるものは・・・。
どうか、この茨の先は人の入れない、美しい自然であるように・・・。」

ミッケくんは、ドキドキしながら茨の向こう側をのぞきました。
丈の長い編み上げ靴だけ見えました。
編み上げ靴の主は、深いため息をついてそして見えなくなりました。

ミッケくんも、なぜか深いため息をついて、森の奥へ帰って行きました。

霧はますます深くなり、やがて真っ暗な夜になりました。
浮き山さんは、闇でドコノモリを包みました。
ドコノモリの仲間たちや沢山の生き物たちは、安心してそのあたたかな闇の中で眠りました。
浮き山さんは、森の子どもたちを寝かしつけたあと、そっと出発しました。
本当に静かに、別な所へ行ったのですよ。
浮き山さんが別な所へ移ったと皆が気がついたのは、日の出、日の入りの方角が変わったからなのです。
皆は、「あれー・・・・!」とびっくりしたそうですよ。

(つづく)第9回
2013.6.25


2件のコメント

赤ちゃんと風船ぼうや

遠くで誰かが泣いています。
困ったよー。助けてー。と言うように、声を長く長く引きずって。

「大変だ、大変だ!」
チコちゃんは、ドキドキしながら森の中を、声のする方へ走って行きました。
目の前を走っているプーニャが、通り道をふさいでいる木の枝の上をふわりと飛んで、どんどん先の方に行くのが見えました。
チコちゃんは、木の枝の上を歩いたり、藤づるにつかまって遠くへ飛んだり、狭い抜け道を這って行ったりしました。

ずっと先へ行ってしまったプーニャの姿がまた見えた時、チコちゃんはプーニャが小さな風船を木の梢からおろしているのに気がつきました。
木の根元にはかごがころがって、そのそばには あらら・・・赤ちゃんが横になっていました。

プーニャが木からおろした小さな風船は、あーん、あーんとまだ泣いていました。
プーニャは、小さな風船を抱きしめて、「大丈夫、大丈夫よ。」と言い続けています。
チコちゃんは、赤ちゃんを抱っこしてかごの中に入れてあげました。

かごの中には、おふとんが敷いてあったのですもの。
赤ちゃんのベッドにちがいありません。
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でも、どうして赤ちゃんがここにいるのでしょうね。
小さな風船が、やっとお話しが出来るようになったのは、だいぶたってからでした。

小さな風船は、他の風船兄弟と同じように、町の広場の風船売りのおじさんの元で暮らしていました。
子どもが、「あの風船、ちょうだい!」と言ってくれるのを、小さな風船も楽しみに待っていました。

でも、いつの間にか町には、お年寄りと女の人、子どもしかいなくなって、皆暗い顔をして歩いていました。
男の人たちは、王さまの命令で次々と兵隊となって、遠くへ行ってしまっていました。
戦争が始まったのでした。

王さまは、兵隊を沢山必要としていました。
早く自分の命令をきく兵隊をつくることを決めたのです!

国中のお父さんは、戦争に行って家にはいません。
赤ちゃんを守るために、国中のお母さんやおじいさんおばあさんたちは、ひそかに赤ちゃんを国の外へ逃がす計画を立てました。
色々な方法で、赤ちゃんたちは次々と国の外へ出て行きました。
けれども、いつまでも王さまに知られずにすむわけにはいきませんでした。
急いで残りの赤ちゃんを逃がさなくてはなりません。
風船売りのおじさんは、風船たちに頼むことにしたのです。

国の外へ、出来るだけ戦いの場から離れて、赤ちゃんが平和に暮らせる土地まで飛んで行ってほしいと。
小さな風船と兄弟たちは、一生けんめい力を合わせて飛んだのでした。
けれど長い旅のうち、次々と力尽きて兄弟たちは、「さよなら、どうか無事に平和な土地に着きますように。」と言って落ちていったのでした。
小さな風船は風に手助けしてもらって、よろよろしながらも長い旅を続けました。
そして・・・、ドコノモリを見つけたのでした。

小さな風船は、喜んで下へ降りて行く途中で、木の梢にひもを引っかけてしまいました。
身動きが出来なくなって・・・、泣いていたのです。
小さな風船の話を聞いて、プーニャとチコちゃんはしばらく何も言えませんでした。

ill_dokono_130617_02プーニャは、小さな風船を抱きしめて、「ああ、ああ」と言いました。
「よくがんばったね。もう大丈夫。ゆっくり休もうね。」と言いました。

赤ちゃんは、さっきからずっと泣かないで、プーニャとチコちゃんを見つめていました。
チコちゃんが手をさし出すと、小さな指がチコちゃんの指をぎゅっと握りしめました。
そして自分の口の中にチコちゃんの指を入れて、チュッチュッと吸いました。

「あっ、おなかすいてるんだわ。」
「さあ、ミルクをあげなくちゃね。風船ぼうやにも、ごはんを用意しましょう!」

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プーニャは、飛び上がって「ホウ、ホウ」と森の仲間を呼びました。
それから間もなく、皆がやって来ました。

そして、皆で赤ちゃんと風船ぼうやを連れて、森の奥へと入って行きました。
子育ての樹のお母さんに、ミルクをもらいに行くのでした。

ミッケくんは、皆と一緒に森の奥に行きかけましたが、立ち止まって、皆とは反対の方角へと歩き出しました。
タバールさんが気が付いて、「おーい、ミッケ。どこへ行くんだ?」と声をかけました。
「森のはずれ、森の入口。」ミッケくんは答えました。
霧がいつの間にか出て来ていました。

(つづく)第8回
6.11


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いのちのわくところ

ドコノモリ

いのちのわくところ

緑の葉が勢いを増してくる季節でした。
ドコノモリを駆け抜けて行く風は笑いながら若い葉を揺さぶるのでした。

或る日、プーニャとチコちゃんは「いのちのわくところ」へ、ヤーヤに会いに行くことにしました。

ドコノモリの中には特別な場所がいくつかあって、「いのちのわくところ」もそのうちのひとつなのです。
前の日に降った雨がやんで、朝早くから晴れているような時、ヤーヤに会えるのです。

「いのちのわくところ」は、まわりを背の低い雑木林に囲まれた、小さな広場のような所でした。
陽の光は広場全体にふり注ぎ、やわらかな草が朝露にぬれ、花が咲き、空気は濃くて、吸い込むと胸の中まで緑に染まるような気がしました。
プーニャとチコちゃんは、ヤーヤがどこにいるのかと、ゆっくりとまわりを見ていました。

オルゴールが鳴るような音が聞こえてきます。
音のする方へ行ってみると、地面から小さなヤーヤが生まれてくるところでした。

次から次へヤーヤが生まれてきます。
ヤーヤは沢山集まって、組み体操のように色々な形をつくって遊びだしました。
ヤーヤは遊びながら声を出していました。

さっき聞いたオルゴールの鳴るような音は、ヤーヤの声だったのです。
ヤーヤがつくりだす形は、どこかで見たことがあるような、何かを連想させるものでした。

なんだろう・・・とプーニャは思いました。
何か別の・・・生き物の姿のような気がしました。

なんだろう・・・と思っているうちに、次々と色々な形が出来、それが崩れ・・・・プーニャとチコちゃんは、いつのまにか時間が溶けてしまったように、ぼうっとヤーヤを見ていました。

やがて、ヤーヤの声が止み、ヤーヤは色のついた光の粒々となって四方へ飛んで行きました。
ヤーヤの一生が終わったのでした。

ドコノモリ

ヤーヤ

草むらに寝ころぶと、かすかにオルゴールが鳴る音が聞こえます。
ヤーヤは姿がなくなったけれど、光の粒々となってあちこちにいるのでした。

プーニャとチコちゃんは、光の粒々を見ていました。
光の粒々は、時々集まって何かの姿となり、また散らばって行きました。
沢山の光の粒々は、いのちの粒でした。
いのちの粒が、思い出を歌っていました。
集まっては思い出が甦り、又消えて行きました。

まわりの木からも、花からも、光の粒が舞いあがっていました。
次から次へ数えきれない程の光の粒が生まれ、小さな広場に満ちていました。
いのちのわくところは、花も木も草もヤーヤも、そしてプーニャもチコちゃんも、全てが光の粒々だったことを思い出す所でもありました。

プーニャはじっとすわりこんで、昔のことを思い出していました。
遠い遠い昔のことを。

そう、プーニャは昔、風船だったのですね。
プーニャの眼には、まっ青な空が映っていました。

帰り道、プーニャとチコちゃんはいつもよりゆっくりと足元を見ながら歩いていきました。
「あのね、私ね、空からはしごを伝っておりてきたの。」とチコちゃんはプーニャに言いました。
「おやおや・・・。こわくなかったの?」
「全然!私。 ここへ来たかったのだもの!」
「ふーん。」
ふたりはちょっと黙ってから、にっこりわらいました。
「私もよ」とプーニャが言いました。

その時どこかで誰かが泣いているような声がしました。
プーニャとチコちゃんは顔を見合わせ、急いで声のする方へ走り出しました。

(つづく)第7回


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おひざ

おひざ

わたしのおひざに
お人形をのせて
わたしは おかあさん

わたしのおひざに
生まれたばかりのおとうとを
のせて
わたしは おねえちゃん

わたしのおひざは
それからしばらく空っぽで
そのうち
誰かさんの枕になって

やがてわたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おかあさん

それからそれから
赤ちゃんが
次から次へやってきて
わたしのおひざは
ずっと満員です

それでもいつか
誰もいなくなって
わたしのおひざは空っぽ

誰かさんが摘んできてくれた
野の花一輪
おひざに置いたけれど・・・

ある日
わたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おばあちゃん

わたしのおひざに
ミルクのしみ
たべかけのビスケット
小さなお人形
坊やがこしらえてくれた
木の小鳥
川で拾ったつるつるの小石

わたしのおひざに
今はもうないけれど
わたしのおひざは
覚えている

ずっとずっと昔
わたしはおひざに
お人形をのせていた

私はおかあさんの
おひざにのっていた

わたしのおひざは
覚えている

おかあさんの
おひざを
覚えている

2013.5.27


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遠足

ドコノモリ
さて、浮き山さんの登り口までの道は、皆が思っていた以上に大変なものでした。
そもそも「道」というものがなかったのです。

茨や倒れた木、背の高い雑木がごちゃごちゃ生えている間をくぐりぬけ、沢を石伝いに歩いていきました。
方角がわからなくなったこともありましたが、元風船のプーニャがふわりと木の上まで飛んで、確かめたりしました。

小さなうっとりさんたちのことが心配ですね。
グーヨは、おなかのたるんだシワの間に、うっとりさんをすわらせました。
チコちゃんの肩かけカバンの中には、パンニプッケルさんが入りました。
大丈夫、皆助け合って行ったのですよ。

浮き山さんの登り口には、大きな杉の木が柱のように道の両側に、列をつくって立っていました。
両側の杉の木は、森の仲間たちが歩いていくのを、じっと見えない眼で追いかけてくるようでした。
「まるで門番のようだなぁ。」とミッケくんは思いました。

鳥の鳴き声も、虫の声もしません。
周りがあまり静かなので、大きな声でおしゃべりすることもやめて、皆、ひとかたまりになって歩きました。

地鳴りのような音が、長く長く聞こえて来ます。
どうやら浮き山さんの寝息のようです。
杉の木立はさらに奥の方まで拡がり、昼間なのに夕方のようにうす暗いです。

「おみやげ、どこに置こうかな?」

周りを見回すと、ずい分石があります。
孔雀の羽根のようなピカピカ光った石や、ピンク色のアメ玉みたいな石とか。
お月さまの光のような石とか、珍しいものばかりです。
これは浮き山さんが集めたものなのかも知れません。
一列にきちんと並んでいます。
中に、おみやげに持ってきた石と、とてもよく似た石がありました。

「あれー。これも浮き山さんのぼんぼんに似ているね。」と、じっと見ていたチコちゃんが、「あはは、これ、ぼんぼん。本物!」と笑いました。
ぼんぼんが寝ていたのです!
じっとしていたので、まちがえちゃったのでした。

「あー、絶対、このおみやげだったら喜ぶよぉ。」とグーヨ。
「そうだね。」
「きれいに周りをそうじして、目立つようにして置いていこう!」とミッケくんが言ったので、皆もせっせとおそうじをしました。
それから皆は、そぉーっと浮き山さんの登り口から離れたのです。
ドコノモリ
小川がちゃぷちゃぶおしゃべりをしている所まで戻って、ふうーっとため息をつきました。
大きな声でしゃべるのをがまんするのって、とても大変でした。
パンニプッケルさんは、皆が杉の大木がすごかった、ちょっとドキドキしたと、わいわいしゃべっているのをにこにこしながら聞いていました。

そうこうしているうちに日が暮れて来たので、小川で水をくんで、お茶をわかすことにしました。
お湯がわくのを待つ間、タバールさんはコンサティーナを取り出し、軽く蛇バラをひろげて、ラ・ラ・ラーと音を出しました。
ホッとするような音色に、皆もにっこりしました。

そばでさっきから木の葉の下の虫を捜してビョンビョンはねている、まるいお団子のような鳥が、びっくりしてタバールさんをみつめました。
・・・そして、その音色をマネしはじめました。

「おやおや・・・。君、ものマネが上手だね。」タバールさんにいわれた鳥は、ちょっとムクれたようです。
「マネじゃないやい!ボクは黒つぐみ。みんなにきれいな声の歌い手といわれているんだ。歌いたいんだ。あれもこれも。えーと、あなたさんのそのー、きれいな音色をきいて、たまらなく一緒に歌いたくなったんだよ!」
「おやおや、それは失礼。では、改めて一緒にどうぞ!」
タバールさんに誘われて、黒つぐみは歌いはじめました。

コンサティーナの歌う声と黒つぐみの声は仲良く響きあって、初めての共演にしてはすばらしいものでした。
皆は、大喜びで拍手しました。

まわりはどんどん暗くなって、やがてお湯もわきました。
温かいお茶をのんで、木の枝にお団子をさして火であぶってたべました。

うっとりさんは、お団子のかけらを3つに分けて、パンニプッケルさんと黒つぐみにあげました。
黒つぐみは眼をまん丸にして、「うまい!」と言いました。

パンニプッケルさんは、小さなかけらを口いっぱいにあけてたべました。
(お・い・し・い)という顔になりました。
ドコノモリ
たき火の炎が勢い良く上がりました。
いよいよミッケくんとグーヨ、プーニャとタバール、それにうっとりさんの楽団の演奏が始まりました。

チコちゃんもパンニプッケルさんも黒つぐみも、皆、体がむずむずして踊りたくなってきました。
曲のテンポが早くなり、チコちゃんは眼が回るくらい、くるくる回りました。
スカートがふくらんで、一人前の踊り子の気分です。

そのうち、プーニャもタバールもグーヨも楽器を放り出して、手と手をしっかりつないで踊りの輪をつくりました。
ミッケくんのバイオリンは、どんどん早くなっていきます。

渦巻だ!
渦巻だ!
飛んでいけ、飛んでいけ
空まで ぶんぶん
飛んでいけー!

踊りの輪の上には、天の川が広がっていました。
皆の体が本当に浮き上がっているみたいに
星々が大きく近く見えました。

翌日、皆が広場に戻った時、浮き山さんの頂上に虹が出ているのが見えました。
虹は、今まで見たこともない、先端が2つに分かれている噴水のような姿をしていました。
まるで、クジラの潮吹きみたいな虹でした。
皆、嬉しくて手をパチパチたたいて、ワーワー騒ぎました。

よし、この次はクジラの形の石を持っていこうとミッケくんは思いました。
そして、別のルートを通っていこうと考え、ニヤッとしました。

2013.5.18(第6回)
つづく


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「願」

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梢は 私たちのゆりかご
いのちの先っぽで
星々からの信号を受け取る
ふるえながら
でも じっと眼をそらさないで見つめている
私たちは いのちの先っぽで
育っていく
それぞれが ひとりで
ひとりっきりの眠りをとおして
育っていく
いつか 星々からの信号に
お返事できるようにと

2013.5.12